ウィレム・デ・クーニング展

「具体的なものをそのまま表しているだけでは、それは美術足り得ない」「美というものは色やカタチだけでも表現できるはずだ」
抽象絵画の流れはそんな中から産まれて来たそうです。1910年、カンディンスキーが創始者とのこと。

やがて時は第二次世界大戦。
芸術の都・パリを始めとするヨーロッパはナチス占領の危機に瀕し、多くの芸術家達がアメリカへと亡命しました。
一方、ほとんど戦場になっていないアメリカでは、チカラのある芸術家達が続々と登場します。
やがて、ヨーロッパから来た芸術と、アメリカの芸術は互いに刺激しあい、後の芸術発展の導火線を作ったそうです…

ウィレム・デ・クーニングもそんな歴史の中にいた人。
「どんな絵を描くのかな?」と、彼の名前で検索してみると画面いっぱいにハデな色がべったり塗られた、ものすごく勢いのある画が、ズラリとでてきます。
しかも、そのテーマは大体が「女性」(場合によっては「水」、またはその両方)だったり…
さらに、彼は生前言っていたそうです…「私は美しい女性を描きたいんだ」と。

一瞬ビックリですが、彼のいた時代の風潮と照らし合わせてみると、納得がいくかもしれません。

戦後、時代は変わり、マリリン・モンローなど「新しい時代の新しい女性」が現れました。
そんな女性を表現したいと思ったデ・クーニングは、「見たままを描く」方法をとらず、これまた「新しくうまれて来た技法」を用いて彼女達を描いたのでした… 

ウィレム・デ・クーニング

ウィレム・デ・クーニング

一昨日、ブリヂストン美術館に行って来ました。
調度、曜日が合い学芸員さんのギャラリートークが聞けました。
説明を聞きながら、絵をじっくりと観ていると、デ・クーニングのアツい想いが伝わってきました。
僕も女性を描くのは好きですから、自分の気持ちと、同氏の気持ちを想像、照らし合わせながら観賞してみたのです…

大半の作品において、絵のどこが、実際の女の人のどの部分なのか、なんとなくしかわからないのですが、画面の中には「ドバドバっと絵具を着けて思いきり厚塗りして、けばけばさせた部分」と、「すごく滑らかに塗っているツヤツヤした部分」があったりします。後者は多分、女の人の肌を表しているんじゃないか、と思いました。
そんな塗り方のギャップを交互に眺めていたら、作品を前に超・真剣な眼差しで描いているデ・クーニングさんの姿が浮かぶようでした。

時代も実力も違うのですが、何か奥のふかぁぁぁああい部分は一緒なのかな、なんて思ったり。
そうすると

「デ・クーニングすごいな…」
「絵ってすごいな…」
「表現したいっていう人の心って素敵だな…」

と妙にじぃんときてしまいました。

学芸員さん

学芸員さん、ありがとうございました。

トーク後、またじっくり館内って、帰路につきました。早速、東京駅でスケッチ。
やっぱり自分はあぁいう風に女性を表現しないだろうなぁ、なんて思いながら描いたら、夕暮れ時の構内がいつもと違って見えました。

2015.1.2

*ブリヂストン美術館はビル改装のため、今回と次回の展示をもって数年間休館してしまうのだそうです。比較的近かったし、大きさも程よい感じで、入場料も1000円以下だったから、好きな美術館だったんだけどなぁ…

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